スティル・ライフ

起きて外を覗いたらぼんやり曇ってて、窓を開けたら空気が冷え切って音がしそうだった。
キーンとかコォォとか、カ行の音が。(笑)

明けきらないどころか真っ暗なうちから出勤する恋人はほんとに偉いなぁと思う。
毎朝欠かさずにくれる「行ってきます」のメール、見てる俺はたいていまだ寝ぼけてるのに。

今日も行ってらっしゃい。
俺もがんばります。

送ろうかどうしようか、朝からずっと迷っていたメールは、送らずに削除した。
届くかどうかもわからないのに迷っている自分が最後には馬鹿みたいに思えた。

三島の最後の演説と同じ日なんだよ、とか。
俺はそんなの知らなかったし正直どうでもよかったから、俺にとっての今日は、ただ祝いたい誕生日のうちのひとつだった。

きっともう忘れてる。
俺だけまだ覚えてる。

思い出して少しだけ懐かしく嬉しく感じるのと、後ろめたく感じるのと、どっちが多いか考えたら、思い出さない方がいいに決まってる。
今幸せでいてくれればいいなと、それだけ思う。

もしいつかまた会えたら、俺は幸せだよって笑って自慢しようと思う。

まとまらないままにどうでもいい呟き。

暇でしょうがない人向け(笑)

手渡したそれを「大事にしてね」と言いながら、大事にするってどんなだろうって考えた。

物を大事にするっていうなら、丁寧に扱うとか、綺麗に保つとか、失くさないようにしまっておくとか、そういうことだ。
人を大事にするっていうのは？無理させないとか、危険から守るとか、汚いものを見せないように隔てるとか？

俺が一番大事にしたいって思ってる人は俺より背でっかいし俺より世話焼きだしちゃんと大人だし、喋るし笑うし泣くし怒るし拗ねるし逆境でもめげないし下ネタも得意だし、普通に考えて俺の庇護が必要とは思えない。
その上俺の知らないところでいろんなトラブルに見舞われたり、心を痛めたりしながら、ちゃんと自分で解決してる。
たぶん俺じゃどうにもしようがないことばっかりだと思う。

それでも俺は守りたいしあたためたいし元気にしたい。
大事にする、やりかたが合ってるのかなんて知らないけど。
俺には何かできるかな。
できてるかな。

早めの誕生日パーティーの後はるーくんとくっついて眠って、次の日も二人で暇だったからやっぱりくっついて眠って、張り合うみたいに好きって言い合って、散々言ったのにまだ足りなくて、別の言葉を探すけど上手くいかない。

隣にいたら、言い足りない分は触れてしまえるからいい。
手を伸ばして、撫でて、唇で辿って、噛みついて。
言葉を知らなかった小さな小さな頃のように、触れた肌からいろんなものをもらって、返す。
形の無いふわふわした充足感が満ちて、そこに名前をつけるように、好きだよ。と口に出す。

離れてしまった後の心許無さったらない。
触れられない距離なら1mでも500kmでも38万kmでも同じ。
言葉以外の手段がないから、仕方なく何度も唱えるけど、どうしても伝え足りない分が淋しさにすり替わって暴れ出す。

「好き」の上はなんだろうねって話をして、やっぱり「アイシテル」じゃないのかなって結論に落ち着いたけど、触れている間はつりあう気がするそれも、目の前にいないと急に薄っぺらい言葉に感じてしまう。
上も下もない。どっちもただの言葉。

触りたいな……