東京の桜は満開だそうです。
桜前線はこれから北に向かって進んでゆきます、とアナウンサーが言っていた。
不思議だよな、『桜前線』て。
桜前線があるならひまわり前線とか菜の花前線とかがあってもいいじゃないか。
咲いたからどうだっていうんだ、って昔は思ってた。
でも不思議と、桜って、咲いたことを誰かに伝えたくなる花だと思うんだ。
もともとは、農作物を植えたりする時期の目安として、たまたま全国に広まっていたソメイヨシノがいつごろ咲くかというのが指標に選ばれたのが始まりらしいんだけど。
毎年大々的に発表される桜の開花宣言は、なにかそれ以上の存在になってる気がする。
理由を考えてみる。
ひとつは、桜(ここでは特にソメイヨシノ限定)がやっぱり日本人の好きな花だからかな。
探さなくても物心ついた頃から目に入る場所にあり、卒業とか入学とか節目の時に咲く花でもあり。
(年の初めは1月なのに、外国は9月が多いのに、4月が年度初めだったりするのはなんでなのか、その辺の話は別の機会に掘り下げるとして。)
誰にもお気に入りの花見場所のひとつやふたつはあるんじゃない?
咲き始めが好き、満開が好き、散り際が好き。
水辺が好き、山を覆うようなのが好き、自分の庭の丹精込めた一本が好き。
聞けば、みんな一家言持ってるんだよね。
一斉に咲いて、一斉に舞いながら散る姿も、日本人の好みと合致するんだと思う。
じゃなきゃ、単なる一改良種がこんなにも国中至る所に植えられてない。
それからきっと、日本が細長い国だから。
南から北へ、大平洋側から日本海側へ。ゆっくりと綺麗な等高線を描くように日本中を染めていく桜前線は、やっぱり少し特別に思う。
一番に桜が咲く地方の人は、春の訪れを誇るような気持ちで報せ、北国の人は少しずつやって来る春に思いを馳せる。
同じ国の中で同じ花の話題を時間差で共有できる一ヶ月なんだな。
案外素敵な習慣じゃないかと俺は思うんだけど。

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